お店を開業する際、機材や道具のことは考えるでしょうが、
床や壁・天井の素材までイメージされてる方は少ないのではないでしょうか?
厨房の素材には、消防法により内装制限があり、使える素材が限られてきます。
消防法はどんなものか、どんな制限があるかを理解した上で素材にはどんな選択肢があるか知る必要があります。
施工業者さんに依頼する前に、どんなお店をイメージしてるのか、どんな素材があるのか、どれくらいの予算がかかるのかなど、予め考えを固めておくと、段取りがスムーズになります。
そんな中でも今回は厨房の内装制限と、私がお店の厨房の壁で利用しているキッチンパネルを題材にしていきたいと思います。
キッチンパネルは内装制限にピッタリな素材で、且つ、長期間に衛生を保てる為、お菓子屋さんの厨房の壁として、選択して良かったとおもうアイテムです。
内装制限の対象
厨房の内装制限
対象条件
- 1.2m以上の高さがある天井や壁
- 耐火建築物の場合は3階以上で床面積が1000㎡以上
- 準耐火建築物では2階以上で500㎡以上
- それ以外の建物は200㎡以上のとき
対象箇所
厨房や、火災時に避難経路となる居室・廊下・階段・通路
対象外
火は上に燃え広がるという性質上、床は内装制限の対象外となっています。
対象素材の基準
準不燃材または難燃材料以上の耐火性がある材料。
防火材料
国規定している防火材料の3つの条件
- 第1号 燃焼しないものであること。
- 第2号 防火上有害な変形、溶融、き裂、その他の損傷を生じないものであること。
- 第3号 避難上有害な煙又はガスを発生しないものであること。
防火材料の区分
防火材料はさらに火災時の加熱開始後、第1号、第2号、第3号を満たす時間に応じて以下の3つのレベルに分けられます。
- 難燃材料
- 準不燃材料
- 不燃材料
難燃材料
火災発生時・加熱開始後5分間は燃焼・変形、溶融、き裂、その他の損傷を生じないもの、有害な煙又はガスを発生しないものであること。
例)難燃合板・難燃プラスチック板など
準不燃材料
火災発生時・加熱開始後、10分間は燃焼・変形、溶融、き裂、その他の損傷を生じないもの、有害な煙又はガスを発生しないものであること。
例)木毛セメント板・石膏ボードなど
不燃材料
火災発生時・加熱開始後、20分間は燃焼・変形、溶融、き裂、その他の損傷を生じないもの、有害な煙又はガスを発生しないものであること。
例)コンクリート・れんが・瓦・アルミニウム・ガラスなど
内装制限の法律
目的
建物内で火災が発生した際に、建物内部の延焼を防ぐこと。
建築基準法
建築基準法では床面から1.2m以下の壁は制限の対象ではありません。
消防法
避難通路に物を放置してはいけない。
不燃素材を使用すること。(壁や天井の室内に面する場所では、カーテンや布製のブラインド、絨毯なども対象となる。)
スプリンクラーの設置
消防法の基準に該当している場合はスプリンクラーの設置が義務づけられています。
また、市区町村によっては消火器の設置が義務づけられている場合もあります。
所轄の消防署に必要な防火素材、防火対策を確認しておく必要があります。
施工会社に委託する場合は、施工会社の方が段取りを組んでくださいますが、ミスが無い様、依頼主として施工会社へ確認しておくことが必要です。
防災対象物品
防災対象物品とは?
消防法施行令及び消防法施行規則の基準で合格した物品。
防火対象の箇所
天井、壁、カーテン、ブラインド、絨毯など。
壁のアクセントとして仕上げ材の一部を変える場合は、『消防法に引っかからないか』『利用する素材が防火対象物品か』を確認する必要があります。
【厨房の壁・天井】素材の一例
- ケイカル板
- セラミック
- シージング石膏ボード
- ステンレス
- アルミ
- ホーロー
- タイル
- 不燃材にメラミン加工
- 天然石
- モールテックス
キッチンパネル
キッチンパネルとは?
キッチンパネルは、防火対象物品で、ガスコンロなどといった加熱機器周辺の壁面に取り付けることだけでなく、厨房の壁を油汚れや水はねから守る、機能性の高いアイテム。
キッチンパネルの特徴
- 耐火性が高く、火の周りでも利用可能。
- お手入れがしやすく厨房が清潔に保てる。
- 素材の種類が多く、店内の雰囲気と調和させることが出来る。
キッチンパネルの種類
キッチンパネルは以下の4点で様々な種類に分かれます。
- 素材
- 柄
- 加工タイプ
- 色
5-①キッチンパネルの素材
- ステンレス・アルミ
- 不燃材にメラミン樹脂が加工されたもの
- ホーロー
ステンレス・アルミ
厨房でよく利用されているのがステンレスですが、もっとも汚れに強いのが特徴です。
しかし、傷には強くありません。
たわしや包丁などの道具でこすると傷ができてしまいます。
メラミン化粧板
メラミン化粧板は様々なバリエーションあり、店内の内装デザインに合わせて選ぶことができるので、お店のイメージを保つ事が出来ます。
タイル調や、木目調、無機質なコンクリート調など、店内と続いたイメージの厨房に仕上げる事が出来ます。
ホーロー
ホーローとは、金属の素材の表面にガラス質を焼きつけた素材。光沢があり高級感のある仕上がりになりますが、3種の中では、1番高額となります。
5-②キッチンパネルの柄
- セラミック調
- パール調
- 石目調
- タイル調
- 木目超
5-③キッチンパネルの加工タイプ
- フッ素
- シリコン
加工から得られる効果
- 撥油加工
- 撥水加工
キッチンパネルがおすすめなワケ
①厨房内の壁を清潔に保つため
キッチンパネルは厨房の壁を油汚れや水はねから守る、機能性の高いアイテムです。
何年も経過した厨房の壁は、材料(グラザージュやムース、卵液が飛び散った)の油汚れが染みついてしまったりします。
ガス台の汚れだけでなく、ミキサー周り、作業台横など、製造過程の材料が、思っている以上飛び散ることもあり、壁が汚れてしまう事が頻発します。
キッチンパネルは継ぎ目や目地がなく、平面で表面がコーティングされているので油の染み込みが無く、拭き掃除で綺麗に拭きととることが出来ます。
つまり、キッチンパネルを利用する事で清潔で見た目も綺麗な厨房を保つ事が可能です。
②ガス台周辺の耐熱性向上
お菓子作りのガス台周りはコンフィズリーやパティシエールなど、高温・高熱で作業する事が多くなります。
キッチンパネルは、高温の作業やもしもの引火にも耐えられる、耐熱性の高い素材でできています。
③シンク周りをの水撥ね、油脂分の混ざった汚れの清掃が簡単
厨房では小さな道具だけでなく、大きなミキサーボールや天板、果物の洗浄など水飛び跳ねる作業が多くなります。
また、家庭での洗い物に比べて、作業の速さを求められる厨房では、余計な水撥ねは頻発します。
水撥ねは綺麗な水分が撥ねるだけでなく、菓子の油脂分が混ざっているものが殆どです。
キッチンパネルを利用する事で、『シンク周りの壁の水撥ね』『油脂分の混ざった汚れ』も簡単に拭き取り、清潔を保つ事が出来ます。
キッチンパネルのメリット・デメリット
キッチンパネルのメリット
表面がコーティングされているため清掃が簡単。
厨房の壁は継ぎ目や目地の部分が汚れると、汚れは落ちにくく、カビが発生し安くなります。
キッチンパネルは継ぎ目や目地がなく、平面で表面がコーティングされているため清掃が簡単で清潔を保つことが出来る。
マグネットが付けられるタイプ
キッチンパネルには、マグネットをつけられるタイプがあります。
マグネットで張り付けるタイプの包丁ラックや、ルセットなどを簡単に貼りつけておくことができます。
油性ペンで記入できるタイプ
キッチンパネルに直接、油性ペンで記入できるタイプでは、その日の作業メニューを記入したり、スタッフ同士の伝達事項を記入でき、ホワイトボードの役割にもなります。ペンの種類や放置時間により、拭き取りに時間がかかる場合がありますが、その際はメラミンスポンジで除去する事が出来ます。
キッチンパネルのデメリット
パネル代がかかってしまう。
壁の仕上げの中で、ダントツの高額というわけではありませんが、パネル代が発生してしまいます。しかし、
私のお店は10年経ちますが、壁の汚れ具合はなく、10年経ったとは思えないほど清潔感を保つ事が出来ています。
自分の厨房を見慣れているせいか、他店の厨房に訪れると、時を感じる壁だな。。。と、感じます。
キッチンパネルのメンテナンス
汚れは拭き掃除でok
キッチンパネルは表面に凹凸がなく、つるつるとしている素材なので、1日の作業後に拭き掃除をする事で油汚れや水垢、粉の飛び散りはきれいな習い事ます。
こびりついた油汚れは、洗剤を使ってok
キッチンパネルに油汚れがこびりついてしまっら柔らかい布に中性洗剤を含ませて拭きます。その後、“水拭き”→“から拭き”でokです。
キッチンパネルを選ぶ時の3つのポイント
店内イメージとのリンク
お菓子屋さんに訪れるお客様は、ただお菓子を買いに来るだけでなく、お店のコンセプトである『ストーリー』に入り込むことも楽しみにしていてくださいます。
自分達が思っている以上に作業している姿を楽しんでいますし、厨房の中を見ています。
お店のイメージにリンクして、厨房の壁の柄や配色を選択する事で、お客様に違和感なく過ごしてもう事が出来ます。
清潔を保ちやすい柄の選択
キッチンパネルは、全般的に、掃除もし易く綺麗に保つ事が出来る事が大きなメリットの一つですが、柄によっては、凹凸がある事で、掃除がしづらいこともあります。
無理矢理掃除をする事で、傷がついてしまうことも考えられますので、キッチンパネルを長くきれいに使うために、
重視するのは、柄だけで無く、なるべくフラットなタイプを選ぶなど、清掃のしやすさもポイントになります。
現物を見ての選択
キッチンパネルは、たくさんの種類があります。色や素材で選ぶのは勿論ですが、カタログだけの選択は、実際のイメージと変わってくる事もあるため、ショールームに訪れて実際に確認する事をおすすめします。
利用するキッチンパネルが決まったら、同時に壁や天井に利用出来る内装制限も確認しましょう。
キッチンパネルはDIYも可能
キッチンパネルはDIYも可能です。DIYの方法については、以下の『キッチンパネルをDIYで。お菓子屋さん開業の施工経費の削減』で詳しく解説しておりますので、合わせてご参照ください。
キッチンパネルメーカー
キッチンパネル取り扱いメーカーの一例は以下となります
厨房設計を考える上で、グリストラップも欠かせません。
グリストラップとは、洗い物をした際に、厨房から出る排水に含まれる油(生クリームやバターなどの油脂)やゴミが直接下水道に流してしまい自然環境への悪影響を考えるのを防ぐシステムです。
飲食店の中でも、特にお菓子屋さんは排水管が汚れやすく、詰まりやすいと言われています。
グリストラップの解説は以下で詳しく解説しております。
まとめ
① お店を作るには内装制限がある。
② 内装制限には防火材料を使う必要がある。
③ 防火材料の区分は3つ
- 難燃材料
- 準不燃材料
- 不燃材料
④ 内装制限は消防法により定められている
⑤ キッチンパネルは防火対象物品
⑥ 厨房の壁にはキッチンパネルがおすすめ
⑦ キッチンパネルは耐熱性だけでなく、清潔を保つにも抜群
お店を運営して行く上で、準備段階からコンセプト設定やブランディングを行い、他店と差別化を行っていくことで、小さなお菓子屋さんでも運営がうまく進むようになります。
お店の運営についてのマーケティング戦略は以下で詳しく解説しています。