お菓子屋さんがチョコレート作業をする際、沢山のチョコレートを使用します。チョコレートは温度が下がると固まってきてしまう為、作業がしづらくなったり、厚くコーティングされてしまったりします。
そんな時に保温器があると、効率的に作業する事ができます。しかし、保温器として利用出来るチョコレート専用のエフェクターは高価なものです。
チョコレートに力を入れているお店ならば購入しても良いと思いますが、そうでなければ、なかなか手が出にくい機材です。
今回紹介するのは、以下の2点です。エフェクターの代わりに低価格で購入可能な低温調理器の活用を紹介します。
それでは、詳しく解説していきます!
エフェクターとは
エフェクターとは
エフェクターとはチョコレートを溶かしたり、テンパリングを取ったチョコレートを保温するための乾式溶解器。
保温のメリット
テンパリングを取ったチョコレートを一定温度で保温してくれる為、量産作業時に温めの回数が減り作業効率が上がる。
エフェクターのメリット
- 乾式であるため、作業中にチョコレートに水分が混入するなどのトラブルを防ぐことができる。
- 大量のチョコレートを利用する作業が効率的におこなえる。
エフェクターのデメリット
- チョコレート専用の機械であるため、高価なものであること。
低温調理器とは
低温調理器とは
低温調理器とは一定の温度になるよう管理されたお湯の中で湯せん調理をすることができる調理機器。つまり、湯煎の温度を自ら調節することなく温度を保ってくれるという事です。
低温調理器のメリット
- 低価格で入手できる
- 料理などにも多用可能
低温調理器のデメリット
- チョコレートに水分が混入するトラブルが起きやすい
- チョコレートの量が多い作業には不向き
低温調理器がエフェクター代わりになる
上記で説明したように、エフェクターと低温調理器の共通点は一定温度を保つことができるいうところです。このことを応用して湯煎の温度を一定に保つことでチョコレートの作業に応用できます。
低温調理器は小さなお菓子屋さん向き
低温調理器で保温できる湯煎の量は10~15L程度と限られています。つまり、大量のチョコレートを利用するチョコレート専門店や大きなお菓子屋さん向きではありません。とはいえ、10~15Lの湯煎で保温できるチョコレート量は小さなお店であれば充分に活用可能です。
低温調理器をテンパリングにも活用
チョコレートのテンパリングは以下の手順でします。低温調理器は③の再度温度を上げる保温時に利用すると、温度の上げすぎを防ぐできるため、失敗のないテンパリングができます。
- 融解:チョコレートの温度を上げて溶かす
- 冷却:冷やす
- 保温:再度、温度を上げて結晶を整える
アイリスオーヤマの低温調理器
低温調理器のスペック
LTC-01 | LTC-02 | |
主要素材 | ABS樹脂、ステンレス | ABS+PC、ステンレス |
商品サイズ | 90×130×400 | 50×100×334 |
重量 | 1400g | 900g |
電源 | AC100V(50/60Hz共用) | AC100V(50/60Hz共用) |
設定可能温度 | 25~95℃(0.5℃単位) | 25~95℃(0.5℃単位) |
最大使用可能水量 | 15L | 12L |
定格消費電力 | 1000W | 800W |
設定可能時間 | 1分~99時間59分(1分単位) | 1分~99時間59分(1分単位) |
電源コードの長さ | 約1.0m | 約1.5m |
低温調理器の機能
- 固定用クリップで水没しない
- 防水仕様
- 細かい温度設定(25~29℃間 0.5℃単位)
- 操作しやすい斜めのタッチパネル
- お手入れがしやすい
- 1000W のハイパワー加熱
引用:アイリスオーヤマ
テンパリングとは
テンパリングで得られる利点4つの利点
テンパリングをする事でチョコレートに得られる利点は以下の4つです。
- 型離れが良くなる
- 綺麗にパキッと割れる
- 艶・光沢
- 口どけが良くなる
テンパリングが外れると起こる5つのこと
テンパリングをしない事、または外してしまう事(調温がうまくいかない事)で起きることは以下の5つです。
- 型離れが悪くなる
- 艶・光沢がなくなる
- 口溶けが悪くなる
- ブルームが生じる
- 風味が劣化する
ブルームとは
チョコレートの温度変化により、チョコレートの表面の艶がなくなり、白っぽい粉を吹いたり、油脂分が浮き出ること。ブルームには以下の2種類が存在する。
ファットブルーム
チョコレートの成分である「カカオバター」が高温により分離を起こし、油脂分が白い結晶になって表面に浮き出て再度凝固した状態。
シュガーブルーム
” 急激な温度変化による結露 ” や ” 湿度 ” によって、チョコレート内の砂糖が溶け出し、結晶化した状態。
テンパリングの基本
テンパリングの3ステップ
テンパリングは以下の温度を上げ下げするという3ステップで完了する簡単な作業です。
- 融解:チョコレートの温度を上げて溶かす
- 冷却:冷やす
- 保温:再度、温度を上げて結晶を整える➡低温調理器有効
調温はチョコレートの種類により変化するため、次項の温度表を参考にしてください。
チョコレート別・テンパリング調温表
チョコレートの成分がキーポイント
チョコレートに含まれる成分により調温する温度が変わってきます。
ミルクやホワイトチョコレートの乳脂肪はカカオバターより低い温度で溶ける特徴があるため、ミルクとホワイトの融解温度は40~45℃で設定してください。
ミルクやホワイトを50℃程の温度で溶かしてしまうと、乳成分の中の粉乳と砂糖が凝固します。このことで、食感や味わいにも影響を及ぼします。
スイートチョコレート | ミルクチョコレート | ホワイトチョコレート | |
チョコレートの油脂成分 | カカオバター | 乳成分+カカオバター | 乳成分+カカオバター |
融解温度 | 50~55℃ | 40~45℃ | 40~45℃ |
冷却温度 | 27~29℃ | 26~28℃ | 26~27℃ |
保温温度 | 31~32℃ | 29~30℃ | 28~29℃ |
スイートチョコレートを例にしたテンパリング
上記の調温表より、スイートチョコレートを例にしたテンパリング温度は以下となります。
- 融解:スイートチョコレートの温度を50~55℃に上げて溶かす。
- 冷却:27~29℃まで冷やす。
- 保温:再度、31~32℃まで温度を上げて結晶を整える。
テンパリングの4つの手段
テンパリングを行うには以下の4つの手段があります。
- 水冷法 低温調理器有効
- タブリール法 低温調理器有効
- フレーク法 低温調理器有効
- 電子レンジ法
低温調理器はテンパリング後の保温にも有効です。保温出来ることにより作業効率を上げる事ができます。
水冷法
お湯や水で調温を取る方法
注意点
- 湯煎を使用するので、水分がチョコレートに混入しない様に気をつける。
- 直火や高温の湯煎には避け、チョコレートの温度帯に気を付ける。
必要な道具
- 湯煎用ボウル
- 冷却用ボウル
- チョコレート用ボウル
- ゴムベラ
- 温度計
作業手順
- 湯煎を準備する。湯煎の温度50~70℃(チョコレートの種類により温度は変化)
- ボウルに刻んだチョコレートを入れて湯煎にかける。チョコレートを融解温度まで温めて溶かす
- 水を張ったボウルにつけて底を冷やしながら、チョコレートをゆっくりと混ぜる、冷却温度まで下げる。(空気が入らない様に)
- チョコレートの温度が下がったら、再び湯煎にかけ32℃まで加温し、よくかき混ぜてチョコレートの温度を均一にする。低温調理器有効
タブリール法
融解したチョコレートの一部をマーブル台の上に広げ、冷却し、チョコレートに戻す方法
注意点
- 清潔なマーブル台を利用する。
- 冷却時に固まりすぎてしまわない様に注意する。
必要な道具
- 湯煎
- マーブル台
- チョコレート用ボウル
- ゴムベラ
- 温度計
作業手順
- 湯煎を準備する。湯煎の温度50~70℃(チョコレートの種類により温度は変化)
- ボウルに刻んだチョコレートを入れて湯煎にかける。チョコレートを融解温度まで温めて溶かす
- マーブルの上にチョコレートの一部を広げ、空気を抱き込まない様に、攪拌しながら温度を下げる。
- チョコレートの温度が下がったら、ボールに戻す。
- 状態を均一し温度を測定する。
- 温度が下がりすぎていたら、湯煎にかけ保温温度にする。低温調理器有効
フレーク法
融解したチョコレートに刻んだチョコレートを加え冷却する。(加熱方法は電子レンジでも、湯煎でもOK)
注意点
- 清潔なマーブル台を利用する。
- 冷却時に固まりすぎてしまわない様に注意する。
必要な道具
- 湯煎
- マーブル台
- チョコレート用ボウル
- ゴムベラ
- 温度計
作業手順
- 湯煎を準備する。湯煎の温度50~70℃(チョコレートの種類により温度は変化)
- ボウルに刻んだチョコレートを入れて湯煎にかける。チョコレートを融解温度まで温めて溶かす
- 刻んだチョコレートを加え、溶かしながら冷却温度まで下げる。
- チョコレートの温度が下がったら、再び湯煎にかけ32℃まで加温し、よくかき混ぜてチョコレートの温度を均一にする。低温調理器有効
電子レンジ法
電子レンジで融解し、刻んだチョコレートで冷却する方法
注意点
- 電子レンジでの加熱は短い時間20~40秒ごとに混ぜ、加熱が過度にかからないようにしないと、焦げてしまう。
- 刻んだチョコレートの粒が大きすぎると冷却時になかなか溶けない。
- 保温温度まで上げる際に加熱しすぎてしまう事に注意(10秒~20秒ごとにチョコレートの温度を均一にして確認する)
必要な道具
- チョコレート用ボウル
- ゴムベラ
- 温度計
作業手順
- 刻んだチョコレートを融解用・冷却用に分ける。
- 融解用は電子レンジ用のボールに入れて500wで20~40秒ごとに混ぜ溶かし、融解温度まで温度が上げる。
- 刻んだチョコレートを加え、溶かしながら冷却温度まで下げる。
- 再び、電子レンジで加熱しながら、保温温度まで上げる。(よくかき混ぜてチョコレートの温度を均一にする)
チョコレートの保管方法(湿度・温度)
チョコレートは保管温度や湿度が重要になってきます。条件が合わないと、ブルームをおこし、風味や食感の劣化を招き舞ます。
理想的な温度帯と湿度
※生チョコは要冷蔵(10℃以下保存)
- タブレット(板チョコ)15~20度 湿度50%前後
- ボンボンショコラ 15度 湿度50%前後
チョコレート保管庫
『 チョコレートの保管庫 』はチョコレートの専門店ではない小さなお菓子屋さんにとっては高価な冷蔵庫です。その『 チョコレート保管庫 』の変わりになるのが『 玄米保冷庫 』です。チョコレートの保管方法や玄米保冷庫については以下の『 玄米保冷庫がショコラ保存庫に!! | 小さなお菓子屋の経費削減 』で、詳しく解説しています。
小さなお菓子屋さんにとって初期投資のかかる開業で経費削減が可能なポイントです。
今回紹介したエフェクターと低温調理器