小さなお菓子屋さんであっても、闇雲にお菓子を作る訳ではなく、マーケティングが大切です。
しかし…菓子職人…ずっと厨房に籠って、お菓子と向き合ってきました。
こういう事に本当に疎いです。まず、良く耳にはするけど、
- 『マーケティング』という言葉の意味が分からない!!
- 『マーケティング』と『ブランディング』の違いもわからない!!
- 作りたいお菓子があるから『マーケティング』は関係ない!!
そんな方も多いのではないでしょうか?私も実際にその1人でした。
『マーケティング』とは…
「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにする」ための概念【出典:Wikipedia】
なんだか難しいそうな“ マーケティング ”を簡単に訳すと、
お客様からの“ 自発的な購入 ”を促すためのトータル的な戦略。
『マーケティング』の考え方が頭に入っているか、いないかで、ビジネスに対しての考え方が変わってきますので、まずこの事を理解する事から始めましょう!
では、どの様にその戦略を立てていくのか、詳しく解説して行きます!
マーケティングとは
既にある商品をどう販売するかを考えるのでは無く、お客様が求めている商品を探り、
お客様が自発的に購入したくなる様な商品を提案し、お菓子やコンテンツが売れる仕組み作りをする事。
私は商品開発をする際に、自分が作りたいお菓子とマーケティング工程のstepを擦り合わせて、販売可能かどうかを判断しています。
『ブランディング』と『マーケティング』の違い
マーケティング
お客様からの“ 自発的な購入 ”を促すためのトータル的な戦略。
ブランディング
お店や商品、作り手に対しての信用・信頼を獲得する事で、イメージを高め、
そのイメージを価値として認識して貰う為の戦略。
ブランディングを行わないマーケティングは短期の利益追求。
ブランディングを行った上でマーケティングを行うことで、長期的な顧客を獲得した上での戦略となります。
つまり、『ブランディング』は、マーケテイング戦略の一つとも言えます。
マーケティングの6Step!
Step.1【コンセプトの決定】
①方向性の決定
②ターゲットを絞る
③エリアの選定
④経営のイメージ
” Step1.コンセプトの決定 ”は『開業とコンセプトの考え方』で決定の手順を詳しく解説しています。
Step.2【ブランディング】
①ブランディングの一貫性
②期待・愛着
③信用・信頼
④品位・品格
” Step.2ブランディング ”は『ブランディングの構成要素』でブランドの組み立て方を詳しく解説しています。
Step.3【企画】
①イベント性
②季節性
③特別感
④エンターテイメント性
Step.4【構成】
①ストーリー性
②理屈による正当化
③具体性
④欠点の告知
Step.5【デザイン】
①写真
②フォント
③装飾
④カラー
⑤バランス
Step.6【導線】
①わかりやすさ
②見つけやすさ
③使いやすさ
④ノン・ストレス
” Step.6導線 ”は『ホームページの構成要素』でどの様に考えて導線を結ぶべきかを詳しく解説しています。
作りたいお菓子が決まっていたらマーケティングは必要ない?
ここまでの説明だと、お客様目線にお菓子の嗜好や種類を合わせるとも取れる様に聞こえます。念願の独立を果たす訳ですから、自分の表現したいお菓子の方向性が決まっている方も居るかと思います。
その思いを曲げて、お客様に喜ばれる商品をというのは違うのではないか?
しかし、『マーケティング』はそのようなものではありません。
マーケティングは最初のステップで、『コンセプト設定』と『ブランディング戦略』の2つのステップが必要です。この2つのステップを踏む事で、対象となるお客様の層を絞る事ができるからです。
つまり、この時点で、” 自分の作りたいお菓子 ” や ” 自分の想像するお店 ” のイメージに合った、【お客様をターゲット】にする事ができます。
この事で、自分のイメージとは大きく異なるマーケティング戦略を取る必要はなくなります。
マーケティング効果と お客さまの心理
マーケティング心理12種
小さなお菓子屋さんが『マーケティングの効果』として、お客様に期待する心理は12種。
マーケティング心理学では難しい用語を利用していますが、ここではわかりやす用語に変換して解説しています。
12の心理要素を考えた上で、” マーケティング Step.4 構成”を考えていきます。
①連鎖
②演出効果
③松竹梅効果
④自分にピッタリ
⑤リピート
⑥少ない選択肢
⑦損失回避
⑧自分だけの
⑨Give and Take
⑩好意
⑪小さなお店をアピール
⑫印象操作
①連鎖
行列を見ると、気になってしまう。自分も並んでしまう。この心理が連鎖。
購入者の口コミ投稿を目にする事で購買意欲が高まるという心理も同様で、購入後に口コミ投稿を行う事で連鎖していきます。
SNSや口コミサイトの発展により、他者による商品の経験レビューを手軽に知ることができるようになりました。
ショップにコメント欄を付けるのも、この心理を利用しています。
②演出効果
人の脳内では文字と視覚を同時に認識します。
図の上の段の2枚のカードの様に、
赤いカード➡文字で青
青いカード➡文字で赤
この場合は、脳内で2つの情報が不一致を生じ、通常よも認識までに時間がかかってしまいます。
この人間心理を考えると次のような事が言えます。
- 高価格帯で販売したい商品に安っぽい演出
- 低価格帯で販売したい商品に高級品のようにきれいな演出
このことで、脳内に不一致が生じ違和感、困惑を与えてしまいます。
高価格帯で販売したいのに、それなりの演出が出来ていなければ、お客様は不信感を抱きます。
つまり、商品販売の際のデザインは、商品の価格帯に相応な演出が必要となってきます。
③松竹梅効果
『松竹梅効果』とは3つの料金プランを用意していると、真ん中の料金プランである『竹プラン』がいちばん買われるという現象を表します。
例えば、下記の3種のプランを比較した場合、
- 『松竹梅』3つのプラン
- 『竹と梅だけ』の2つのプラン
- 『松と竹だけ』の2つのプラン
平均購入金額が一番高くなるのは松竹梅3つのプランを用意している場合になります。
この効果を利用し、一番売りたい商品を真ん中の松に、あえて不安を感じる価格帯を設定した梅、高級品の松を用意すると、松が一番買われます。
また、お客様は商品選択肢が1つであれば、”買うor買わない“が判断要素となりますが、
商品選択肢が3つあると”3つのうちどれを買うか”という思考に切り替わるという心理に変わります。
④自分にピッタリ
人間心理には多くの情報の中から自分に都合のいい、自分に関係する部分だけ受け入れる働きがあります。これは広告でよく使われる手法で、
- 『糖質制限のあるあなたへ』
- 『コーヒー好きの為のお菓子』
といったコピーを掲げ、対象を絞ることで、お客様が「自分の為に作られた商品」と感じさせる効果があります。
この心理効果では『皆さん・方々』といった不特定多数の言葉は使用してはいけません。そこの様な言葉が目に入ると、”自分には関係ない”と判断されてしまいます。
⑤リピート
お客様がリピーターになるには、以下の心理が求められます。
- とっても、美味しかった。
- 価格と価値が合致していた。
- 気持ちよい接客だった。
- 雰囲気がとっても良かった。
- トータル的にこのお店が好きだ。
- いつも、気になる存在だ。
リピーターを獲得するには、常にこれらの心理を獲得することを念頭に置いて戦略を立てる必要があります。
⑥少ない選択肢
『少ない選択肢』のお客さま心理は、
選択肢が多すぎて、どれが最適か判断に迷う場合、
最も無難な『何も買わない』という選択肢をとるという人間の本能的な心理です。
先に解説した、松竹梅効果では選択肢が1つではなく3つある方が良いと解説しましたが、今回は選択肢が多すぎると難しい選択からの回避したいという心理が働いてしまいます。
あれもこれもと詰め込み過ぎてよくわからない『ホームページ』も同じです。
お客さまにとって、最も魅力的な選択肢数個だけを提示することが重要です
⑦損失回避
人間心理は『利益よりも損失を過大評価する』と言われています。
つまり利益を得ることよりも損失回避を優先する心理効果があります。
マーケティング戦略を行う上で、お客様のリスクをいかに低くするかはとても重要です。
その為に、商品によって得られるメリットよりも、リスクを強調することで、お客様自身がリスク回避をした上で選択するように促します。
この効果の利用方法には以下のものがあります。
クリスマスケーキは個数限定!先行予約は〇月〇日まで!
➡先行予約でなくても購入できるが、無くなってしまうかもしれないというリスクを回避して先に予約するという選択をします。
⑧自分だけの
人間は心理的に、『皆が食べてるお菓子を買いたい』という気持ちと、『自分しか知らないお菓子を買いたい』という気持ちを持ち合わせています。
ここでは「自分だけの」という気持ちを刺激する心理効果を利用します。
この心理効果において「人気です」「1日に〇〇〇〇個売れてます!」というアピールでは効果的ではありません。
逆に、「このお菓子は一見様は購入できません」といったアピールが有効です。
⑨Give and Take
「何かしてもらったら、何かをお返ししななくてはならない」と感じる心理効果。
人から何かをされて、何も返さないことに対し、多くの人は居心地の悪さや不快を感じます。この心理を利用した効果には以下のものがあります。
- 『バレンタインデー』→『ホワイトデー』
- お菓子の試食を食べたから購入する。
- 贔屓(ひいき)されたことを感じて、頻繁に足を運ぶ。
⑩好意
好意は『好意的に感じてる人から勧められると、良いものだと信じてしまう』という心理効果です。
商品を販売する際は、商品そのものの好感度よりも、その商品を販売する人の好感度のにより商品販売数がアップするといわれています。
つまり、お菓子が美味しくて、惹かれるという理由の他に、この人から買いたいと思わせる事が重要になります。
お菓子の話だけでなく、出身や好きなブランドなど、会話の共通点を見つけて会話を弾ませます。この事で、お客様に好意を伝え、お客様からも好意を持って貰います。相手との関係性を深めることができれば、心理効果を発揮する事が出来ます。
⑪小さなお店をアピール
人間心理として。強く力のある人より、弱い立場にいる人や不利な状況に追い込まれている人を応援したいという心理効果。この効果の利用方法には以下のものがあります。
『当店は製造から販売まで1人で行っています。1つづつ、丁寧に製造していますので、お待たせしてしまう事もあるかと思います。ご了承ください。』
これは単に『1つづつ丁寧に製造しています。』というだけでなく、『製造から販売まで1人で』と、アピールしています。
この様に自店の弱みを明らかにし、それに伴う利点を提示することで、好印象に転換することができます。
⑫印象操作
⑫印象操作ー1
『1キロの鉄』と『1キロの羽毛』は同じ1キロですが鉄のほうが重い印象を受けます。
この、数字の表現によって受け取る印象が変わるに人間心理を利用したマーケティングが以下の例です。
- このお菓子は食物繊維が3.3g
- この1袋でレタス1個分の食物繊維!
商品を販売する上で、商品やお店の魅力を伝えることはとても大切になります。
言葉の選択で、より魅力的に感じさせる事も残念な気持ちにさせる事もあることを考慮した上で文章構成を考える必要があります。
⑫印象操作ー2
2000円のクッキー缶が売れなかった。➡3000円の値札をつけ、1000円引きで2000円と宣伝➡2000円で購入された。
これは、最初に見たものが、その後の判断に影響を及ぼすという人間心理です。
人は無意識に自分の記憶の中の値段を基準に考えます。つまり、初めに3000円という数字を記憶させてから2000円に値下げしたように見せると、安いと感じてしまいます。
小さなお菓子屋さんで、値下げという露骨な値札をつけるシチュエーションはあまりないかと思います。しかし、値下げというシチュエーションだけではなく、以下の様応用が利きます。
販売したい商品の隣に値段の高い商品を陳列しておくと、脳内がその2つで価格比較し、販売したい商品が魅力的に感じる。このように、お客様心理を考察した上での陳列も重要になってきます。
まとめ
◉マーケティングに、ブランディングを組み込む事で相乗効果。
◉マーケティングは6つのステップ
- コンセプトの決定
- ブランディング
- 企画
- 構成
- デザイン
- 導線
◉12のマーケティング心理を把握する
- 連鎖
- 演出効果
- 松竹梅効果
- 自分にぴったり
- リピート
- 少ない選択肢
- 損失回避
- 自分だけの
- Give and Take
- 好意
- 小さなお店アピール
- 印象操作
お菓子屋さんの独立開業の手順が知りたい方は、以下の記事で詳しく手順を解説しております。