お菓子屋さんが厨房を設営する上で欠かせないのが、『グリストラップ』
飲食業に携わったことの無い方にはグリストラップがわからないのではないでしょうか?
グリストラップを簡単に説明すると、洗い物をした水道から下水に流れる前に汚れを回収するシステムです。
また、グリストラップは知ってるよ!という方は、色々な種類があるのはご存知ですか?
グリストラップは地域の条例により、設置義務が変わってきますが、事業を営む身としては、環境に配慮しながら運営したいものです。
また、グリストラップが無い事で、排水管が詰まってしまうなど、トラブルも頻発します。
今回は、私がおすすめする小さなお店向けのグリストラップのタイプや注意点を中心に解説して行きたいと思います。
今物件を探し中という段階の方に注意して欲しいことがいくつかあります。
物件の中には水道管の太さや電気の容量など、インフラで注意しなければいけない点が存在します。
『物件探し』の段階の方は以下の点にも注意しながら、物件探しをしてください。
また、テナント物件の内装を変えるにあたって、防火素材を使用しなくてはいけないなどの規定が定められた『内装制限と消防法』が存在します。『内装制限と消防法』については以下で詳しく解説していますので合わせてご参照ください。
グリストラップとは?
グリストラップ【グリス(油脂)トラップ(せき止め)】
業務用の厨房に設置が義務付けられている「油脂分離阻集器」のこと。
洗い物をした際に、厨房から出る排水に含まれる油(生クリームやバターなどの油脂)やゴミが直接下水道に流してしまい自然環境への悪影響を考えるのを防ぐシステム。
グリストラップ内は3層に分けられていて、それぞれ以下の様な役割があります。
1層目 大きなゴミをバスケットで回収
2層目 油脂と細かい汚泥を分離
3層目 汚泥と油脂を分離した排水を下水道へ排水
グリストラップの義務
グリストラップ設置は法律では義務化されていませんが、地域には条例が存在することがある為、『地域の条例』に合わせるのがベストです。
『地域の条例』によって下水に流す水質には厳しい罰則と基準があります。もし、未処理の汚水を下水道に流してしまうと、懲役刑もしくは罰金を科せられる恐れがあります。
東京都では、すべての飲食店で設置が義務化されている為、グリストラップを導入しないと条例違反になります。
グリストラップが無い事によるリスク
排水詰まりの頻発
グリストラップを設置していないと、排水詰まりが頻繁に起きる可能性があります。
お菓子屋さんは特に、生クリーム、バター、小麦粉など、流れにくい要素があり、冬になると冷えて排水管内で固まってしまいます。
グリストラップを設置している私のお店でも、年に1回は清掃のプロの方に高圧洗浄の掃除を依頼しないと排水詰まりが発生します。
掃除に来ていただいた清掃業者さんに伺った所、排水管が詰まりやすい飲食店は以下の3店だそうです。【正式な調査結果ではありません】
1位パン屋
2位お菓子屋
3位中華料理店
下水管の詰まりによる損害賠償
グリストラップを設置せずに下水管を詰まらせてしまうと、損害賠償を請求されることもあります。
下水管の破損は自分のお店だけでなく、近隣の方に迷惑をかけてしまう事にも繋がり、損害賠償は莫大になる可能性があります。
グリストラップは定期的な掃除が必要
トラップの掃除のほとんどは営業終了後に行わう仕事になります。
また、溜まった汚泥は産業廃棄物業者に依頼する必要があります。(一般ゴミと一緒に捨てることは不可)
掃除を怠ると起きるリスク
排水管のつまり
定期的な清掃を怠ると、汚泥が溜まり、排水管に油脂が流れ込んで固まり、排水管を詰まる事になります。
排水管が詰まると、悪臭の発生・排水の逆流が起こり、厨房内を汚す事にもなります。
悪臭
定期的な清掃を怠ると、汚泥が腐敗したり、雑菌が繁殖することで悪臭が発生します。
害虫の発生
グリストラップは汚泥の回収を目的とした装置の為、食品のカスがたまります。定期な清掃を放置すると害虫(ゴキブリ、ハエ、ネズミ)発生の原因となってしまいます。
グリストラップの選択基準は3つ。
- 設置場所によるタイプ
- 素材
- 流入方式
①設置場所
場所によって設置できるサイズや素材が変わってきます。
主な設置場所
- 厨房内
- バックヤード
- 地下
- 床下
- 屋外
設置場所により変わるグリストラップのタイプ
- 屋内床置型
- 屋内埋設型
- 屋外埋設型
屋内床置型(置き型)
厨房内、水道の直ぐ下に設置するタイプ
場所を取ってしまいますが、水道の下の空きスペースに収納が可能。
厨房内設置するタイプな為、大掛かりな工事の必要が無く、低コストで導入しやすい。
テナントを利用する場合の多くは、床下や屋外に設置するスペースが無い為、置き型を選択する方が多いようです。
私のお店も、置き型(FRP製)を利用しています。今まで働いてきたお店は、埋込型が多かったのですが、埋込型は掃除の頻度が落ちてしまいがちでした。
コンパクトで清掃も埋設型より楽なので、こちらを選択して良かったと感じでいますが、容量が少ない為、すぐに一杯になってしまいます。
コンパクトな分、清掃も頻繁にする必要があります。
清掃を怠ると油脂などが漏れ出て、店内に臭いが漂いやすくなるのが注意点です。
屋内埋設型
厨房の床下に埋め込むタイプ。
種類は浅型と深い型の2種類あり。浅型の方が、掃除がしやすい。
埋め込み型は厨房内には、場所を取ら無い為、導線を崩さずに設置できます。
しかし、埋め込み型は店舗内の床や店舗の外など大掛かりな工事をする必要があるので店舗物件の構造や契約書の確認が必要です。
また、費用が高くなってしまう傾向にあります。
※テナントでも、建設当初から飲食店用の物件は、店内の床に埋め込みができるように設計されている場合もあります。
屋外埋設型
勝手口や裏口など、屋外に埋め込み設置するタイプ。
屋外に置くため、臭いが気になりにくいことがメリットだか、同時に、管理がずさんになりやすい為、こまめに異常がないか確認する必要があります。
容量が大きいタイプのものを選ぶことがでる為大型店舗向け。
また大型なグリストラップの場合、清掃やメンテナンスの負担も大きくなります。
グリストラップの素材
素材により費用や使用可能年数が変わってきます。素材には以下の3種類があります。
- FRP製
- ステンレス製
- モルタル製
①FRP製
=繊維強化プラスチック
メリット
①3種の中で最も低価格
②腐食に強い
③導入へのハードルが低い
デメリット
①強度や熱への耐性が弱い
室内向けor屋外向けか?
室内向け
耐久年数
おおよそ5〜7年
②ステンレス製
メリット
①サビにくい
②水漏れも起きにくい
③長期間利用可能
デメリット
①FRP製に比べて費用が高め
室内向けor屋外向けか?
両方可能
耐久年数
おおよそ10〜12年
③モルタル製
=コンクリートを床に流し込み、グリストラップの機能を作り出し使用
メリット
①費用は実費で、グリストラップを購入する必要がない。
②オーダーメードで設計可能
デメリット
①破損しやすい
室内向けor屋外向けか?
両方可能
耐久年数
設置環境に左右される。
排水の流入形式
キッチンからグリストラップに排水が流れるときの経路の違い。
- 排水管流入
- 側溝流入
①排水管流入
洗い物がそのまま流れる排水管からグリストラップに接続するタイプ。細い排水管から流せるような料理を提供している小規模の飲食店であれば、排水管流入でok
②側溝流入
側溝や排水溝の出口にグリストラップを設置
大型店舗・油を多く利用する中華料理屋さん向き。
グリストラップの掃除
清掃は3ステップ!
①バスケットの清掃は毎日行う
②油脂や沈殿物の清掃は2〜3日に一度。
排水から分離した油分や沈澱物は2〜3日に1回の頻度で除去。
汚泥と油分は産業廃棄物として扱われるため、廃棄には業者に委託する必要があります。
③定期的に清掃業者に依頼
通常は自分たちで清掃を行いますが、定期的に清掃業者に依頼することをおすすめします。
清掃業者に依頼する事で、グリストラップ内だけでは無く、下水管まで清楚を依頼できる為、下水管詰まりを防ぐ事ができます。
また、グリストラップが破損してしまうと、大きなトラブルが起きる為、清掃の際にメンテナンスを依頼してプロの目でチェックしてもらう機会を設けることも大切です。
お菓子屋さんが清掃業者に依頼す際のおすすめ時期
私が清掃業者へ依頼している時期は、年に1回5〜6月頃もしくは9〜10月頃です。それは、以下理由からです。
①お菓子屋さんの閑散期で、自分たちの仕事的にも余裕が出来る為。
②夏場(7月〜8月)になると強い匂いを発生し始めるので出来れば、その前(5〜6月)に下水管の掃除を済ませたい為。
③気温が暑く、匂いのキツイ過酷な状況を業者さんにお願いするのを避ける為。
④冬場は下水管も冷え、油脂分が固まってしまうので、冬場になる前に(9〜10月までには)掃除を行いたい為。
⑤繁忙期に下水管が詰まるトラブルを避ける為。
業者に委託する時の注意点
お菓子屋さんは生菓子を扱うので、普通の飲食業以上に衛生に注意しなくてはなりません。
グリストラップや排管の清掃を業者さんに依頼する時は、汚水が飛び散る事を想定して、周りの道具を片付けるは勿論の事、食品に纏わる道具を洗うシンクでグリストラップの器具や汚れた手を洗わない様に、清掃業者さんに促す必要があります。
清掃業者さんは、お菓子屋さんがどれほど衛生に気をつけているのか、気をつけなければならないのか、把握していない為、あらかじめ注意点を説明してから、作業をしてもらう様にしましょう。
グリストラップの清掃を軽減するアイテム
清潔を保ってお菓子を製造したいのは勿論ですが、日々の掃除は負担になってくるものです。以下のアイテムは、掃除の負担を軽減する為に、私が利用しているアイテムです。
- グリストネット
- グリストラップバイオクリーナー
- グリースクリーンロール
- 掃除用すくい網
グリストネット
グリストラップのバスケットにはめて利用するネットです。
毎日のバスケット清楚はこのアミをチェンジするだけにしています。
割と目が細かくゴミをキャッチしてくれますが、毎日の取り替えが必要です。
毎日取り替えないと、ネットが詰まってしまうので注意してください。
グリストラップバイオクリーナー
厨房作業終了後、グリストラップに近い一番近いシンクの排水口から毎日投入すると、バクテリアが油脂を分解し透明に近い状態で排水してくれます。
これを利用すると、悪臭が出にくくなります。利用する前とした後では大分状態が変わりました。1日100mlの利用で、約40日分のサイズになります。
グリースクリーンロール
2〜3日に1回行う、油汚れの除去の負担を軽減してくれるのは、グリースクリーン。
グリースクリーンを水面に乗せて置き、交換するだけ。
『グリストネット』『バイオクリーナー』を同時に行うと、汚れ具合にもよりますが、沈澱物は月一くらいの清掃で済むイメージです。
カットタイプは以下となります。
掃除用すくい網
専用のすくい網、すくい棒も販売していますが、大型グリストラップ用がほとんどで、立って作業をする用なのか、柄の部分が長い物が多い印象です。
小さなお店の掃除には大きすぎる為、100均で販売している金魚や熱帯魚用の網を利用しています。
専用のすくい棒には以下の様なものがあります。
まとめ
◆グリストラップの素材は3種類
- FRP製
- ステンレス製
- モルタル製
◆グリストラップの設置可能箇所のタイプは3種類
- 屋内床置型
- 屋内埋設型
- 屋外埋設型
◆浅型と深型。掃除しやすいのは浅型。
◆店舗スタイルによって備え付けられるタイプが違う。
◆掃除は細めに行い、店内への悪臭防止。
◆掃除頻度を減らす為のアイテムを活用すると便利。
◆最低年に1回は清楚業者に依頼するのがオススメ。
お店を運営して行く上で、準備段階からコンセプト設定やブランディングを行い、他店と差別化を行っていくことで、小さなお菓子屋さんでも運営がうまく進むようになります。
お店の運営についてのマーケティング戦略は以下で詳しく解説しています。