お菓子屋さんを開業する時、どんな形でスタートしようか悩んでいますか?
時代と共にオンラインショップは盛んになり、実店舗を持たないお菓子屋さんもどんどん増えてきています。答えは、人それぞれになってしまいますが、
必ずしも店舗を持たなければ経営が出来ないわけでも無く、店舗を持たない選択もどんどん増えてきています。店舗を持つことには、メリットもデメリットもあります。
自分にはどんなスタイルが合っているのか考えて、長く続ける為に無理のない開業方法を選んでいきましょう。
店舗を持たないスタイルはこんな方にオススメ
◉人付き合いが苦手
店舗を持つという事は、接客という仕事は避けられません。
人付き合いが苦手な方はオンラインショップ向きかもしれません。
◉初期投資の費用が少ない
どうしても初期投資がかけられない方は、レンタルキッチンからのスタートや厨房だけ持つ事により、初期投資を削減する事ができます。
◉固定費を抑えたい
販売店舗を構える場合、立地条件の考慮や、販売スペースの確保が必要になるため、家賃(固定費)も嵩んできます。固定費を抑えることは、経営をしていく上で大事なことの一つです。
◉時間を自由に使いたい
店舗も持つという事は、お店を閉めたらその分の売り上げがたちません。また、営業厨房は常に店舗にスタッフが居なくてはならない為、時間が拘束されます。
◉副業でお菓子を販売したい
本業が主婦(主夫)・会社勤めや雇われパティシエ・学生など
お菓子作りや販売に時間をかけられないがやってみたいと思っている方
以上の方以外は店舗を持つ事を検討してみてもいいと思います。
店舗を持つメリット
焼きたて、作りたてを販売できる。
自分がおいしいと思ったお菓子をお客様に伝えたい、共感して欲しい、という気持ちがあります。
焼きたての香り、作りたての食感。
新鮮であればあるほど、作っているパティシエたちにしかわからない美味しさがそこにはあります。店舗と厨房を併設する事で、より近い状態を提供する事が可能です。
お客様の顔を見て販売することができる。
対面販売をしていると、コミニュケーションの大切さを痛感します。
お客様の顔と名前を覚え、お客様と交わす何気ない日常会話。
そこから生まれる信頼関係はファンの獲得に繋がり、自分のモチベーションになっている と実感しています。
ブランドイメージやコンセプトを伝えやすい。
お店の 外観や、店内に入った時の色調・レイアウトなど の雰囲気から視覚よるブランドイメージやコンセプトを感じてもらうことができる。
『ブランディングの構成要素』でブランドの組み立て方を詳しく解説しています。ブランドの組み立て方を意識すると視覚によるイメージ付けが理解しやすくなります。
工房の併設でLIVE感を。
厨房の中で作業をしていると、『それは何を作ってるの?』なんて、声をかけられる事があります。見える所で作業する事で、今、正に作られているというLIVE感を提供する事ができます。
お客様の声を生で聞くことができる。
良くも悪くも、お客様の声は生で届きます。
『こないだの、凄く美味しかった!』『今度はあれが食べてみたい!』
生のお客様の声は貴重で、励みにもなり参考にもなります。
配送では販売できない壊れやすい商品も販売ができる。
配送を前提にした販売方法だと生菓子など状態の変化の激しい商品や柔らかい商品、飾りに凝った商品の販売は難しくなります。そこには美味しさや美しさがあり、作り手として伝えたい部分でもあります。店舗を持つことで壊れ安い商品の販売が可能になります。
実物を見て納得して頂いた上で販売ができる。実際に見て納得してご購入頂く事で、思っていたより小さかった・少なかった・パッケージ素材が違かった、などのトラブルを防ぐ事が出来る。
店内の他の商品を知っていただくことができる。
◉おすすめの商品はショーケースの1番目立つ所に
◉季節感を演出する商品や内装で陳列。
◉次のシーズンはこれが販売されますよ!ご予約始まってますよ!という案内。(貼り紙やチラシ)
リアルに視覚に入ることで、季節感を感じて貰え、購買欲を掻き立てる。
顔が見える商売=信頼が得やすい
その人の 醸し出す雰囲気や人柄がダイレクトに伝わること で信頼関係が構築されやすい。
気持ちにメリハリが生まれる。
お菓子屋さんの仕事は、同じ作業の繰り返し。お客様と接することで、身が引き締まりモチベーションを保つことができています。
店舗を持つデメリット
初期投資に多額の費用がかかる。
◉物件取得費(敷金礼金)
➡︎ 店舗のスペース分、広い物件を確保しなくてはならない為、物件取得日も高くなる
◉厨房施工費、 内装施工費、外観施工費
◉厨房機材費
◉レジ・ショーケースなどの店舗機材費
◉店内の棚や卓など店内装飾費
青いマークの部分が店舗を持たなければ必要のない部分になります。
家賃光熱費等の経費がかかる。
店舗のスペースが広い物件を確保しなくてはいけなくなるため、必然と家賃も高くなる。
店舗スペース分の光熱費頭の維持費。
お店を閉めていると売り上げが立たない
ご来店くださったお客様に販売して初めて売り上げが立つため、お店を閉めていると維持費だけかかり利益が入ってこない。
時間が拘束される。
お店を開けている時は、必ず店内にスタッフがいなくてはいけなくなるため、時間が拘束される。
人件費がかかる。
規模にもよるが、製造と販売を同時にするのは困難なため、自分以外にも販売スタッフが必要になってくる場合もある。
メンテナンス費用がかかる。
床のコーティングや、看板の剥がれなど店内の内装外装をきれいに維持するためのメンテナンス費用が必要になってくる。
店舗を持たない経営の販売手段
- オンラインショップ
- イベントへの出店
- 経営してる他店舗の店頭にお菓子を置かせてもらう
- 催事出店
- 移動販売
- 訪問販売
店舗を持たない場合は何処でお菓子を作るか?
店舗を持たない場合、販売用のお菓子を何処で製造するかが問題になってきます。家庭のキッチンで製造したお菓子は法律上・衛生上販売せることができません。
製造する例として以下のようなものがあります。
- 自宅を改装して、営業許可を取得する。
- 菓子製造業を取得している、レンタルキッチンを借りる。
- お菓子屋さんの厨房を借りる。
自宅を改装して、営業許可を取得する。
前にも記載しておりますが、家庭のキッチンでは販売を目的とするお菓子の製造は法律で認められていません。営業許可を取得するには、家庭のキッチンとは別にもう一つキッチンを増設する必要があります。
そのほかにも、営業許可を取得するためにはいくつものガイドラインがありますので、それらをクリアする事で、自宅を改装して営業許可を取得する事が可能となります。
自宅の改装には200~300万円必要と言われています。営業許可書については以下の『【2021年6月法改正】菓子製造業許可と飲食店営業許可。お菓子屋さんを開業する為に必要な許可証』で詳しく解説しておりますので、合わせてご参照ください。
菓子製造業を取得している、レンタルキッチンを借りる。
最近では、菓子製造業を取得済みのレンタルキッチンがおおく存在します。
それらのキッチンを利用して販売する事が可能ですが、食品衛生責任者の保持が必要です。
菓子製造業を取得するには食品衛生責任者を決める必要があります。もし、食中毒が起きた時、異物混入が起きた時、責任の所在を明確にする必要があるためです。
レンタルキッチンの所有者は、あくまでキッチンを貸し出す事が目的で、責任を取らされる事を嫌います。
つまり、何か問題が起きた時の責任の所在をはっきりさせるために、ご自分でも食品衛生責任者の保持が求められる場合が殆どです。
食品衛生責任者以外にも製菓衛生士・調理師免許・栄養士などがあります。それらの取得方法については以下の『お菓子屋さん開業と必要な資格』で詳しく解説しておりますので、合わせてご参照ください。
お菓子屋さんの厨房を借りる。
もし、知り合いのお菓子屋さんがいて、定休日に厨房をお借りする事が出来れば、一番スムーズだと思います。その場合、以下のよう問題をクリアにしておくべき事がいくつかあります。
- 販売したお菓子を起因とした問題が起きた場合の責任の所在。
- お店の材料を使わせてもらうか、自分で準備するか。
- 利用料と光熱費の負担額について。
- 使用後の清掃について。
- 防犯・盗難について。
その他にもオーナーさんが注意してほしい利用の仕方など細かく明記した書類を作成し、署名・捺印をしたうえで両者で保管するようにしましょう。
口約束はトラブルの素です。折角良好な仲をこの事で壊す事のないよう、書類の作成を怠らない様にしましょう。
店舗を持たなくてもリスク管理は必要
お菓子屋さんを経営する上で、問題(異物混入や食中毒、死亡事故)が起きてしまうリスクを想定する責任があります。プロとして商品を販売する最低限の責任として『PL保険・生産物賠償保険』の加入が必須です。『PL保険・生産物賠償保険』については以下で詳しく解説しておりますので合わせてご参照ください。
店舗が無い分余計にホームページが大切
お店を運営して行く上でブランディングはとても大切です。オンラインショップのみの運営は、『売りたい!』の気持ちが全面に出すぎてしまい、ブランドの構築が難しくなります。
ブランディングを行うと、以下のようなメリットがあります。
- 宣伝費のかからない集客
- 知名度による新規顧客の獲得
- 価格競争からの回避
ブランディング(ブランド構築)の意味でも、ホームページは重要な役割を果たしてくれます。
「ブランディングってなんだ?」という段階の方は、以下の『ブランディングの構成要素』でブランドの組み立て方を詳しく解説しています。
まとめ
◉時間や資金、自らの性格を考え長く続けられるスタイルを見つける。
◉店舗を持たずにスタートして、後から店舗を持つのもあり。
◉ 店舗を持つには初期投資がかかるので覚悟が必要。
お店を運営して行く上で、準備段階からコンセプト設定やブランディングを行い、他店と差別化を行っていくことで、小さなお菓子屋さんでも運営がうまく進むようになります。
お店の運営についてのマーケティング戦略は以下で詳しく解説しています。